2社目の面接|ITとは無縁だった食品工場の経験が役に立った

用意した台本を横に、オンライン面接で想定外の質問を受けて固まるのんちゃん エンジニア

「エンジニアになって開発したいシステムはありますか?」

2社目の面接で聞かれた、最後の質問です。

まずい。そんな質問、私のWordの台本にはありません。

自己紹介、志望動機、転職理由。そこまでは準備万端だったのに、肝心の「作りたいシステム」が出てこない。まさか、ITエンジニアを目指す面接で、ITエンジニアになって何を作りたいか聞かれるとは。

……いや、聞かれるやろ。

そんな私を助けたのは、プログラミングの知識ではありませんでした。食品工場で働きながら、何度も「この仕事、どうにかならんのか」と思っていた経験です。

退出の「3秒カウント」まで用意していたのに

私はもともと食品工場の資材部で、発注や在庫管理を担当していました。IT業界へ転職するために受けた2社目の面接は、技術派遣会社BとのZoom面接でした。

何を隠そう、私は面接が大の苦手です。

そのため、自己紹介も志望動機も転職理由も、答えを丸ごとWordへ書き出していました。面接対策というより、台本制作です。これを丸暗記戦法といいます。

しかも、台本には受け答えだけでなく、Zoomへの入室から退出まで書いてありました。

では、退出させていただきます。3秒カウント。

退場するタイミングまで指定してある。面接というより、もはや舞台監督です。

実際、前半は順調でした。転職理由、入社後のキャリア、勉強していること。準備していた質問が次々に出てきます。

しかし最後に、まったく想定していなかった質問が飛んできました。

「開発したいシステムはありますか?」

退場の準備は完璧。でも、そこに至るまでの大事な質問への答えがない。面接の山場が台本からすっぽり抜けていました。

「作りたいもの」は出てこない。「直してほしいもの」ならある

困って頭に浮かんだのは、当時の仕事で使っていた発注システムと在庫管理表でした。

あれ、マジ使いにくいったらありゃしねえんだよなぁ……。

なぜか。食品工場の資材部では、在庫をExcelの表で管理し、発注は別のシステムで行っていたからです。

発注するたびに、こんな作業が必要でした。

  1. Excelの在庫管理表を見て、今ある資材の数を確認する。
  2. 必要な発注数を自分で計算する。
  3. 計算した数字を、別の発注システムに入力する。

システムはある。しかし、そこに入力するまでの確認と計算は、人がやる。

在庫管理表を確認し、別の発注画面へ入力するのんちゃん

つまり、人間がシステム同士の橋渡し役です。せっかくシステムが二つもあるのに、その間をつなぐのは私の目と手。そこ、一番つないでほしいところなんですけど。

扱う資材も多く、発注漏れは数え切れないほど経験しました。正確な件数は分かりませんが、少なくとも「うっかりしないように頑張れば解決」という話ではないと感じていました。

情報システム部の人に、Excelの在庫管理表から発注システムへ自動で入力できる仕組みはないか、なぜ二つがつながっていないのか、と相談したこともあります。

今振り返ると、これは単なる仕事の愚痴ではなく、「仕組みのどこを変えたいのか」という話でもありました。

面接で話したのは、ほぼ仕事の愚痴だった

面接での正確な言い回しは覚えていません。ただ、答えた内容はおおむね次のようなものでした。

食品工場で発注や在庫管理を担当していて、手作業の多さに課題を感じています。在庫管理や必要な発注数の計算をシステム化して、人為的なミスや発注漏れを減らしたい。同じように困っている資材担当の人の役に立つ、在庫管理や発注のシステムを開発してみたいです。

最新技術を駆使した壮大な構想ではありません。いつもの仕事の不満を、こうなったら助かるのに、という形で話したのです。

すると面接官から、その会社でも工場の在庫管理システムの開発に力を入れている、という話がありました。

奇跡。

勝ったと思いました。

台本から完全にはみ出した質問が、まさかの面接先の仕事につながった。

もちろん、それで面接に合格した理由が証明されたわけではありません。私がその会社の在庫管理システムを開発した、という話でもありません。

ただ、食品工場で困っていたことが、IT企業で話せる「作りたいもの」になった。 それが、この面接で起きたことです。

あのとき話したシステムは、今でも作ってみたい

ここで、後日談を一つ。

私は今も、在庫管理システムの開発には携わっていません。それでも、いつか携わってみたいと思っています。食品工場向けでなくても、在庫管理の仕組みを作る仕事には今も関心があります。

面接のために考えた、都合のよい答えだったわけではないんですよね。

現場で何が不便なのか、使う人はどこで困るのか。そういう経験があるからこそ、作ってみたいと思うシステムがあります。

食品工場での経験が、そのままITの技術力の証明になったわけではありません。しかし、「何を作りたいか」「誰のどんな困りごとを解決したいか」を話す材料にはなりました。

作りたいシステムが思いつかない人へ

未経験からITエンジニアを目指していて、「作りたいシステムなんて急に言われても……」と思う人もいるかもしれません。

そんなときは、いきなりアプリの名前や機能を考えなくてもいいと思います。まずは、これまでの仕事で感じた「なんでこんなに面倒なんだろう?」を一つ思い出してみてください。

たとえば私なら、次の三つです。

  • 何が大変だった? 在庫を確認し、発注数を計算して、別のシステムへ一つずつ入力していた。
  • 何が問題だった? Excelと発注システムがつながっておらず、資材の多さに対して人の目と手に頼る部分が大きかった。
  • 何ができたら助かる? 在庫の確認や必要数の計算、発注までがもっと連携し、漏れやミスを減らせる仕組み。

これは、私が面接当時に三つの問いを用意していたという意味ではありません。今、自分の経験を振り返って整理すると、こうなるという話です。

「作りたいもの」が出てこなかったら、「困っている人」と「その人が毎日している面倒な作業」から考えてみる。そこに、作りたいシステムの種があるかもしれません。

退出時の「3秒カウント」まで用意していた、あの日のWordの台本。

そこに書けなかった答えは、食品工場で毎日向き合っていた仕事の中にありました。

開いた台本と、食品工場の資材や在庫管理表が線でつながるのんちゃんのイラスト

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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